PBコラム4 養育費って少なくない・・・?(日弁連の考える基準と裁判実務)

わざと目を引くタイトルでコラムを書いています。弁護士の平山です。

府中ピース・ベル法律事務所では、養育費についてのご相談を多く頂戴しています。

当事者間の話し合いで解決しない問題については、裁判所に申し立てをして調停・審判の手続きの中で、適正額の養育費を請求していくのがスタンダードな方針です。

さて、養育費や婚姻費用は、だいたいの離婚の件で、よくもめます。

養育費の額は、いつも不満。

養育費や婚姻費用の問題は、よく争いの対象になります。

なぜならば、もらう方からすればもっと多く払ってほしいと思いますし、支払う方からすれば一円でも安く済ませたい。そういう対立する思いが一番わかりやすく表れるステージだからです。

当事務所の解決事例でもいくつかご紹介していますが、例えば月収20万円程度の夫に対して毎月15万円以上の婚姻費用を要求された事案もありました。逆に、今後子供に会わないという事を条件に、養育費は実質的には支払わないというような内容で合意を勝ち取った事案もあります。

夫婦夫々には、生活の上での様々な事情もありますし、素直にお金を払いたくないと思うケースがあるのは、人情ですからやむを得ないと言えます。

しかし、裁判所の手続きの中では、普段の生活の中のいろいろな事情や調停に至った経緯なども(一応は)考慮されますが、ほとんどの場合、単純に、子供の数と年齢、そして父母双方の収入額のみを基準にして、機械的に養育費の額は決定されます

なので、見かけの収入は多いが仕事上の付き合いや出費が多く自由になる金が無いとか、自宅ローンの返済が重いので支払いが難しい・・・といったような男の事情は、ほぼ考慮されません。主に男性側で事情を主張して養育費の減額を求めても、「そういう事情も含めて算定する」といって、実際には収入の数字だけで決められることが殆どです。逆の立場で、まだ子供が小さくて今後が不安だという母親の気持ちに同情して、養育費を高額に認定するというような事も、少なくとも私の経験上、ほとんどありません。

公平な事件処理といえばそれまでですが、正直な話として言えば、「裁判所というのは人情味にかける役所だな」と落胆することも、しばしばあります。(依頼者のためであれば全力で裁判所と闘うことも厭わないのが私のスタイルなので、強く裁判所に申し入れをしたりしますし、時には裁判官と対立をすることもありますが、それはまた別の話・・・)

さて、養育費の額というのは、お互いの収入などをもとに決まると書きましたが、もっと言えば、裁判所の設定している基準があります。『養育費算定表』と呼ばれるもので、東京家裁と大阪家裁の裁判官の共同の研究成果として発表された早見表が公表されていて、裁判所の実務の上では、この表記載の内容によって、ほぼ機械的に、養育費の額が認定されます。

裁判所のHPで公開されているものなので、検索すればすぐに出てきますが、一応便宜のためにリンクを貼っておきますので、養育費にお困りの方が参照してみてください。

裁判所の公表している養育費算定表はこちら

日弁連の考える、新しい時代にマッチする基準?

ただ、この裁判所の基準は、どちらかというと養育費の適正額としては低廉なのではないかという考え方が強く言われており、子供の権利という意味で言えばもう少し高額であるべきではないかと考える弁護士が多くいました。

そこで、平成28年11月に、日弁連が「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」と題して、養育費などに関する意見書を国に提出しています。

こちらも検索すればすぐに出てくるので、詳しくは日弁連のサイトに譲りますが・・・要するに、これまでの算定表よりも高額で養育費を認定すべきだという考え方です。今後は、弁護士会としては新しい基準が実務に定着することを目指すという方針でやっている・・・という事になるのですが・・・

率直に、現時点での裁判や審判・調停の現場の感覚としては、実際には、日弁連の新しい基準が裁判所に受け入れられるのは、まだもう少し先になりそうです。

私も、このあたらしい日弁連基準に対して裁判所がどう反応するか興味があり、実際に養育費・婚姻費用に関する調停や審判において、新しい基準を使うべきだ=もっと高額の養育費が認められるべきだ、と主張をして手続きをとってみましたが・・・

実際に裁判所において出された審判内容は、「従前の算定表は実務上定着したものであって、もしこの基準で不都合がある場合には基礎となる収入額の認定を調整するなどの対処で足りる」というような意味合いの判断をされ・・・要するに裁判所がおこれまで行ってきた基準は合理的なものだし、日弁連が出した基準とやらで養育費を算定することはしない。と、軽く一蹴されてしまっています。

(当事務所で扱っている府中市周辺の事例をはじめとする、いくつかの東京高裁管内での事例をもとに話しています。もし、新し算定表を基準に認めた事例があれば、お手数ですが情報をご提供いただければ幸いです)

養育費や婚姻費用の考え方は変わる?

そんなわけで、結論として今のところ、養育費の額が、日弁連提言のお陰様で大きく急激に相場を上げるという事は、ちょっと考えにくいと思っています。これは府中市に限らず、だいたい日本中でそんな感じだと思います。

ただ、少なくとも、従来よりも高い水準での要求を交渉の段階で行うことについては、一定の根拠というか正当性ができるようになったとは言えるので、弁護士にとって戦略的な意味での選択肢の幅が広がったとは言えると思っています。

交渉の段階から、私たちは「裁判所の手続きになったときの最終的な解決水準」を念頭において方針を決めます。その意味では、「最終的な解決水準」が変動するまでの影響力は、まだ日弁連提言は持っていないのが実情と言っていいのではないかと、個人的には考えています。

(※なお、このコラムは、すべての事件について妥当する法的見解ではなく、あくまでも現時点での家事事件実務を扱う位置弁護士としての個人的な見解にのみ基づいていますから、いかなる意味においても特定の立場や見解を指示したり非難したりするものではありません。純粋に、養育費や婚姻費用についてお悩みの方に対して裁判実務の情報を提供し、少しでも皆様のお役に立てればと思って執筆公表しています。その意味では、今後、本記事の趣旨と反して裁判所の基準が変動するとか、日弁連提言が定着していく可能性は排除していませんし、いかなる案件に関しても本記事でもって一定の解決をお約束するものでもありません。また、日弁連基準を批難するつもりも裁判所の実務を批判するものでもありませんし、むしろこれら各方面への個人的な見解については、機会を改めて情報発信していきたいと思っています。)

養育費に関する個人的な思い

ただ、個人的には、養育費は子供のための親としての義務であり、親が離婚しても子供にしわ寄せはいかないようにしてあげたいと思っています。

はっきり言えば、親同士が自分たちの都合で離婚をしたり不倫をしたりするのは自由ですが、子供には一切罪はありません。そして、子供は将来の日本を支える唯一の希望であり、国の宝です。

どうしても争いになったときに、裁判所は親の子供に対する扶養義務を『養育費』というかたちで数字で命令しますが、この数字自体が、子供の生活を守るに際して不十分だとなるケースが存在することも、また否定しがたい事実です。できれば、画一的な基準で割り切るのではなく、親として子供にどのようなものを残してやれるのか、子にとっても親にとっても後悔しない形で、いい解決を目指せるよう、皆さんによく考えてほしいなとは思います。

2017.7.29 弁護士 平山諒

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