パイロットの離婚問題
世界を飛び回るパイロットというと,男のあこがれの職業でもあり華やかなイメージがありますが,そんな華やかに見える傍らで家庭に問題が出る,離婚問題を抱えるという事も当然出てきます。
信頼に足る統計はありませんが,仕事柄どうしても家を空ける割合が高いとか,美人CAに囲まれているというイメージ(あるいは妄想でしょうか?)から,平均よりも離婚率が高いという都市伝説のような話も聞きます。
そんな噂話はさておき,パイロットが離婚する場合,いくつか気をつけなければならないポイントがあります。
・離婚原因について
離婚は,両社の合意によってする場合以外は,「婚姻を継続しがたい重大な事由」がなければ認められません。(民法770条)
そのため,なぜ離婚したいと考えているのか,その原因を認識することは,離婚手続きに向けてまず重要になってきます。
そして,パイロット勤務の方は,非常に忙しく,国際線勤務では4泊も5泊も家を空けるというのは普通にあることのようです。
世の中には,夫が家庭を顧みない,家族との時間を大切にしないという理由で離婚したがるという妻もいます。たしかに育児や家事をすべて押し付けて家庭を顧みないとか,家に明けってこない期間が長期に及ぶという事であれば,それが婚姻を継続しがたい重大な事由(民法770条)として離婚原因になりうることはあるでしょう。
しかし,パイロットという特殊な職業に従事しており,家族を養うために働いていたのだという事であれば,必ずしも,家にいられる時間が短いことのみをもって離婚原因として認められるものではありません。妻の立場としても,多くの時間は飛行機を操縦しており忙しいとわかっていながら彼と結婚し,比較的高額の生活費を受け取りながら過ごしてきたのであれば,最初から分かっていた「忙しい」という理由で離婚を切り出すのは,やはり問題でしょう。
また,CAと浮気しているのではないかとか,海外出張中によからぬ遊びをしているのではないかという,「疑い」だけでは離婚は成立しません。客観的な証拠でもって,不貞行為やその他婚姻を継続しがたい事由があるかどうか,裁判上立証可能なのかどうか見極めることが,離婚問題の第一歩として重要です。
離婚の話を考える際には,まず,なぜ離婚したいのか,その原因の本質はなんなのか,そして立証できる証拠があるのか。逆に相手が証拠を持っているのか。こういった争点を,冷静に判断する必要があるでしょう。
・財産分与,養育費の事など
パイロットの方は,高額所得者の方が多いようです。最大手のパイロットの平均年収は2000万円を超えるとも言われており,昔から,医師や弁護士とならぶ高給取りと言われているところです。
このような高額所得者の場合,財産分与や養育費の額を定める際に,その額をいくらと定めるべきか,注意が必要です。
・財産分与について
財産分与とは,夫婦の協力によって築き上げた財産を,離婚に際し清算するというもので,婚姻後に夫婦の協力で取得した財産がすべて含まれます。預貯金や現金はもちろんですが,不動産,証券やゴルフ会員権などもその対象となります。
結婚後,マイホームを買ったとか,家族で乗るための高級自動車を買ったなどの場合には,これも分与対象となります。もしローンが残っているような場合は,どのくらいの残余価値があるのかを慎重に計算しなければなりません。また,会社の給料から毎月一定額の積立金があるとか,保険に入っているというような場合の解約返戻金も,分与財産となりうるものです。
ただし,結婚前から有していた財産や,結婚生活とは関係ないレベルで取得するに至った財産(親から相続を受けたなど)については,特有財産と言い,分与対象から外れてきます。
そのため,離婚を考えるにあたっては,まず,どういった財産が分与対象になり得るのか,洗い出して検証する必要があります。
・養育費について
収入が多い方に未成年の子供がいると,離婚後も子供が成人するまで,養育費を支払うという義務が出ていきます。離婚後も,親権は取られても,親は親,ということです。
問題は,その金額です。
養育費の決め方は,通常は,夫の収入と妻の収入,そして子供の数や年齢によって計算される一定の基準があり,その基準の中で定めます。たとえば年収500万円の方,15歳未満の子供がひとり,妻は専業主婦という条件であれば,だいたい,月4~6万円前後というのが標準ですが,年収2000万円の方の養育費は,15歳未満の子供一人のケースでは,だいたい月20万円くらいになります。
また,一般に養育費とは公立中学校・高校に進学するケースを念頭に置いていますが,私立学校に通う際の学校教育費は含まれていません。親がパイロットとして採用されるほど教育レベルの高い家であれば,その子供にも当然,一流の高校,大学に進学させたいという考え方が出てくるでしょうから,つまり私立高校の学費や大学の進学費用をどちらが負担するのか,という点も考慮しておかなければなりません。この点を決めずに先に離婚をしてしまうと,子供が大学進学をする際に,入学金や学費の分担について,紛争が蒸し返されること危険があります。
・退職金について
まだ受け取っていない退職金であっても,近い将来確実に受け取りが予想される場合には,これも財産分与の対象と評価されることがあります。熟年離婚が増えてきた最近よく問題になりますが,退職金が支払われたことを条件にしての分与を命じるものや,結婚期間に対応する退職金と寄与の割合を掛け合わせて分与を命じる事例など,裁判所でもさまざまな方法で財産分与を命じることがあります。
・弁護士に相談することのメリット
パイロットの方は当然仕事に忙しく,自分の家庭問題の事を冷静に考えたり,法律がどうなっているかを調べたりする時間が無いという方も多いことでしょう。また,気力,体力も知力も非常に高いレベルの方が多いようで,かえって,家庭の問題を他人に相談するという事に消極的になる事もあるかもしれません。
しかし,バリバリのパイロットであっても離婚問題に巻き込まれることは,なにもおかしいことではありません。ましてや離婚や財産分与,親権といった複雑な話で弁護士に相談するのは,なにもやましくありません。むしろ,できるだけ早期に,専門的な知識と見通しの下で離婚問題の対応方針を確定することで,協議や訴訟手続きも泥沼化させず,効率よく解決方法を探ることが可能になります。
ご自身の利益を最大限に守るため,また新たな生活に向けた第一歩をスムーズに歩みだすため,できるだけ早い段階でのご相談をお勧めいたします。
当事務所では,初回相談は無料です。ご予約いただければ夜間,週末のご相談もお受けできますから,お仕事の都合で平日は相談できないという方も,安心してご連絡ください。また,弁護士は守秘義務を負っていますので,あなたが相談された内容がほかの誰かに知られることはありません。
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