公認会計士の離婚問題

im01_240夫婦の一方が公認会計士であるというケースでは,離婚を考えるにあたって,注意すべきポイントがあります。

・財産分与や養育費のこと

公認会計士の先生は,かなりの高額所得者にあたるケースがあります。

平成26年のデータだと,平均年収は700万円を超えており,大手計慶事務所に所属するとか独立して自分の会計事務所を持つようになるなどすると,さらに高額な収入を得ていることもあります。

となると,離婚に際して紛争化するのが,財産分与や養育費といった,離婚給付の額をどう考えるかという問題です。

・財産分与について

財産分与とは,夫婦の協力によって築き上げた財産を,離婚に際し清算するというもので,婚姻後に夫婦の協力で取得した財産がすべて含まれます。預貯金や現金はもちろんですが,不動産,証券やゴルフ会員権などもその対象となります。

また,会計事務所の財産や監査法人の法人名義財産は,通常は夫婦の個人的な財産とは別物と考えられますが,法人への出資持ち分は個人としての財産ですから,その価値について分与対象となり得るでしょう。

公認会計士の出資持ち分をどう評価するかという,とても悩ましい問題です。

また,一般の企業の例ですが,形式上は法人で活動しており,収益も法人名義になっている場合でも,実質的には個人経営だと見られれば,その資産を夫婦共有のものと評価して財産分与を認める例があります(札幌高決昭和44年1月10日)。

また,夫の家業に妻が従事していたというケースで,通常の給与相当額を分与対象として認めたというような例もあります。このような事例の存在は,公認会計士の先生の場合でも,全く無視することはできないでしょう。

離婚協議に際しては,どのような財産が分与対象になり得るのかを見極めたうえで,交渉に臨むことが重要です。

・退職金について

公認会計士を含む士業(弁護士,行政書士など)にはよくありがちですが,独立して自分で事務所を経営しているというような場合,退職金や福利厚生の積立といった,民間企業ではよく見られる財産的な後ろ盾が無い場合もあります。

一方で,公認会計士の先生方は,大手の会計事務所に所属するとか,企業に就職して知識を活用するなどといった働き方があり,こういった場合には,退職金や積立金などの財産は,勤務先との雇用契約や就業規則などによって定まります。すなわち,公認会計士の先生の収入体系は,働き方によって大きく異なりますから,当然,離婚に際して考慮すべき内容も変わってきます。

既払いの退職金はもちろん,近い将来に退職金が支払われることが見込める場合にはこれを財産分与の対象とするという判断がされる事案もありますので,公認会計士との離婚となると,まずは勤務先の給与体系がどうなっているか,確認作業が必要です。

・養育費

収入が多い方に未成年の子供がいると,離婚後も子供が成人するまで,養育費を支払うという義務が出ていきます。離婚後も,親権は取られても,親は親,ということです。

問題は,その金額です。

養育費の決め方は,通常は,夫の収入と妻の収入,そして子供の数や年齢によって計算される一定の基準があり,その基準の中で定めます。たとえば年収500万円のサラリーマンで,15歳未満の子供がひとり,妻は専業主婦という条件であれば,だいたい,月4~6万円前後というのが標準です。

しかし公認会計士の先生のような高額所得者ですと,たとえば年収2000万円の方の養育費は,15歳未満の子供一人のケースで,だいたい月20万円くらいになります。

また,一般に養育費とは公立中学校・高校に進学するケースを念頭に置いていますが,私立学校に通う際の学校教育費は含まれていません。

親が公認会計士であるという教育レベルの高い家であれば,その子供にも当然,一流の高校,大学に進学させたいという考え方が出てくるでしょうから,つまり私立高校の学費や大学の進学費用をどちらが負担するのか,という点も考慮しておかなければなりません。

この点を決めずに先に離婚をしてしまうと,子供が大学進学をする際に,入学金や学費の分担について,紛争が蒸し返されること危険があります。


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