医師の離婚問題

im01_240激務に耐えて患者様の健康を守るお医者様の中にも,離婚の問題に巻き込まれる方はいらっしゃることと思います。

お医者様の先生方は普通の勤め人とは生活スタイルも違いますから,離婚の際にも注意しなければならない点があります。

・医師の法律トラブルについて

医師に限らず医療従事者の離婚率は高い,という説があります。

正確な統計があるわけではないので,単なる都市伝説の可能性もありますが,確かに経験上,医療関係の方から様々な法律相談を頂くことは,割合は少なくないように思います。

医療過誤,というのはまた特殊な話題なのでここでは触れませんが,医療関係の方は総じて知的レベルや生活レベルが高いことから,一般の方との生活の中で,意図せずに軋轢が生じることもあるのかもしれません。また,高所得者の宿命でもありますが,高額の財産を持っているとそれだけで紛争に巻き込まれる危険が増えるのは,世の常でもあります。

離婚に関しても,お医者様という特殊な職業柄,どうしても紛争になりがちな事情があるようです。

・家事,子育てへの非協力?

よく言われるのは,医者である夫が,家事に協力してくれない!というような話です。

お医者様はどうしても当直があったり昼夜を問わずに患者様が担ぎ込まれたりと,どうしても仕事優先の生活スタイルにならざるを得ません。

となると,家の事は妻に任せて自分は仕事に,という「昔ながらの」家庭感が強くなりがちな傾向にあります。

大事なお仕事が忙しいのだから,なかなか帰ってきてくれないのは仕方ない・・・と理解ある相手と結ばれればそれは問題ないのですが,やはり,一緒に過ごす時間が少ない分,離婚問題に発展するというリスクも,正比例して大きくなってしまいます。

また,これは医師が夫である場合に限らず,妻が女医という場合でも,家庭の事が後回しになってしまうという現象は同様です。とくに男性の立場からすれば,自分が「専業主夫」になるという前提の覚悟がある人でもない限り,やはり愛する妻にはできるだけ長い時間家にいてもらいたいと思うのは人情です。(フェミニスト的立場からは異議が出そうですが)

このあたりの,仕事と家庭の折り合いのつけ方,ワークライフバランスの認識のずれによって,離婚問題が顔をのぞかせてくるのです。

ただし,法律的には,「一日何時間家にいないと離婚原因だ」というような決まりはありません。まったく家に帰ってこずに同居義務を果たさないとか,生活費も入れない(遺棄の状態)というような特殊な場合は法定の離婚原因に当たり得ますが,家庭を守るために仕事に出ていて,しかもお医者様という特殊な事情からやむを得ないのであれば,それのみで離婚を求められるというのは道理にかないません。「帰りが遅いから」と一方的な離婚を求められても,法律上の離婚事由には当たりませんから,離婚に応じなければならないという訳ではありません。

・財産分与について

お医者様の先生方は,多くの方が,高額所得者になると思います。

そこで問題になるのが,やはり財産分与の額が高額になりがちだという問題です。

財産分与とは,夫婦の婚姻期間中に築き上げた財産を,離婚に際して夫婦二人で清算する手続きの事で,通常は,財産を2分の1に分与する方法がとられます。

預貯金や現金であれば,単純に,結婚時から離婚時までの財産の増加分の半額を渡す,というような方法もあるかもしれませんが,自宅や投資用マンションなどの不動産,高級自動車などの財産は,物理的に半分にするわけにはいきません。これらの財産をどう評価して,分与財産の計算に組み入れるかで紛争になる事があります。

ご注意いただきたいのは,これは,自宅や自動車の,購入時の価格の半分を渡すという意味ではないという点です。どんなに手入れをしていたとしても,新品と中古品では一般的に大きく価値が異なります。なので,まずはこれらの財産は中古なのだという出発点を確認することです。

しかしながら,中古とはいえ,先生方がお持ちの豪邸の資産価値やベンツ,ベントレーなどの高級車の市場価格となれば,やはり二束三文とはいきません。その分,預貯金を多く相手に渡すなどの調整が必要となる事もあるでしょう。この問題は,いずれにしても「目的財産の評価をどう見積もるか」によって,計算が大きく変わってくる内容でもあります。

知り合いの不動産鑑定士や不動産業者,自動車ディーラーなどに見積もってもらい,どのように財産を評価するのが適正なのか,確認することが必要でしょう。

また,経営者レベルのお医者様の場合,医療法人の出資持ち分をいかに評価するか,という問題が出てくるケースもあります。

病院の評価自体にも関わる話なので,顧問税理士さんや会計士さんとも調整する必要もありますが,医者でない離婚相手に医療法人の出資持ち分を現物で渡すという訳にはいかないと思われますから,評価額を算定して財産分与で調整するというのは,かなり重要な作業になるでしょう。

・養育費や慰謝料について

離婚するにあたっては,慰謝料や養育費といったお金の問題も出てきます。これは,財産分与とは別に,離婚後の子供の養育にかかる費用を負担するというもの(養育費)や,離婚の原因がある当事者から相手方に対して与えた精神的苦痛を補わせるための金銭(慰謝料)など,目的も名目も違ってきます。

慰謝料は,イメージとして分かりやすいのは,浮気をした妻から夫に支払うとか,DVをした夫から妻に支払うなど,離婚原因のある有責配偶者が,支払いを命じられるものです。

先生方の場合,たとえばナースと不倫関係になったとか,激務に耐えかねて家の中ではつい暴力的になってしまったなど,人には言えない離婚原因もおありかもしれません。この原因を争わずに離婚について考えるという事となれば,その慰謝料の額がどのくらいになるのが適正なのかを,お考えになるべきでしょう。

慰謝料の額は,その有責性の度合いや離婚に至るまでの経緯によって事件ごとに決まりますから,必ずしも「どういうケースでは何万円」と決まる計算式があるわけではないのですが,概ね,200万円から300万円程度の枠内に収まる事件が多く,500万円を超える事件は,裁判所における割合としては非常に少なくなっています。(2013年の東京家裁の統計でいえば,500万円を超える慰謝料が認容されるケースは,約5%とのことです)

ただし,支払い義務者の財産状況が非常に高額所得者である場合には,なぜか,この慰謝料や養育費の額が高額になる事があります。

特にお医者様のご家庭では,自分の子供たちも医者にして家業を継がせようと,私立の学校に通わせたり高い教育資金をかけたりする傾向があります。

子供の養育にかかる費用の考慮要素には,親の生活レベルや家庭環境に見合った教育を受けるという側面もありますから,やはり,一般の家庭よりは高額が認定されやすいでしょう。

その場合でも,本当に支払うべき慰謝料はいくらなのか,適正額はいくらかという問題は,常に発生します。

もちろん,自分に責任があるのだと反省して慰謝料を言い値で払うというのは問題ありませんが,やはり,当事者同士の話し合いのみで金額を決める前に,弁護士にご相談いただく方がよろしいでしょう。


ご自身のケースに当てはめて、解決事例をご確認ください。その他、職業別の離婚の特徴についてまとめてありますので、ご覧ください。

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