僧侶の離婚問題
最近,お坊さんやお寺,神社や教会を特集するテレビ番組も増えてきて,僧侶の方に対する国民の見方というのも,やや親しみやすくなってきた感もありますが,そうは言ってもやはり世俗の我々からすれば神聖な職業の方に見えます。しかしその一方で,家庭に問題が生じて,離婚問題を抱えるという事も,人間ですから,当然出てきます。
僧侶の方が離婚する場合,いくつか気をつけなければならないポイントがあります。
・離婚原因について
離婚は,両者の合意によってする場合以外は,「婚姻を継続しがたい重大な事由」がなければ認められません。(民法770条)
そのため,なぜ離婚したいと考えているのか,その原因を認識することは,離婚手続きに向けてまず重要になってきます。
離婚の話を考える際には,まず,なぜ離婚したいのか,その原因の本質はなんなのか,そして立証できる証拠があるのか。逆に相手が証拠を持っているのか。こういった争点を,冷静に判断する必要があるでしょう。
・宗教的価値観の違いについて
例えば旦那の実家がお寺だが,妻は宗派が違うとか,棄教したり,旦那とは別の宗教に改宗した,というような事案が離婚原因になるかどうかというのは,非常に悩ましい問題です。
宗教活動を原因とする離婚裁判というものは存在しますが,夫婦間においても信教の自由は尊重されると考えられており,単に信仰対象が違うというだけで離婚というのは,認められないと考えられます。信仰という人格的な価値観が違うことによって,夫婦関係の維持にどのような不具合が出るのかという点を,見つめなおさないといけません。
・財産分与について
財産分与とは,夫婦の協力によって築き上げた財産を,離婚に際し清算するというもので,婚姻後に夫婦の協力で取得した財産がすべて含まれます。預貯金や現金はもちろんですが,不動産,証券やゴルフ会員権などもその対象となります。
結婚後,マイホームを買ったとか,家族で乗るための高級自動車を買ったなどの場合には,これも分与対象となります。もしローンが残っているような場合は,どのくらいの残余価値があるのかを慎重に計算しなければなりません。また,会社の給料から毎月一定額の積立金があるとか,保険に入っているというような場合の解約返戻金も,分与財産となりうるものです。
ただし,結婚前から有していた財産や,結婚生活とは関係ないレベルで取得するに至った財産(親から相続を受けたなど)については,特有財産と言い,分与対象から外れてきます。
そのため,離婚を考えるにあたっては,まず,どういった財産が分与対象になり得るのか,洗い出して検証する必要があります。
例えばお寺のお坊さんをみると,寺で保育園を経営しているとか,法事の際に乗ってきてくれる原付の他にも高級な自動車をお持ちであるなど,比較的高額の財産をお持ちの方もいらっしゃるようです。寺としての財産なのか,僧侶個人の財産なのかという評価の切り分けも,微妙な事案もありますから,慎重に考慮することが必要でしょう。
・養育費について
収入が多い方に未成年の子供がいると,離婚後も子供が成人するまで,養育費を支払うという義務が出ていきます。離婚後も,親権は取られても,親は親,ということです。
問題は,その金額です。
養育費の決め方は,通常は,夫の収入と妻の収入,そして子供の数や年齢によって計算される一定の基準があり,その基準の中で定めます。たとえば年収500万円の方,15歳未満の子供がひとり,妻は専業主婦という条件であれば,だいたい,月4~6万円前後というのが標準ですが,年収2000万円の方の養育費は,15歳未満の子供一人のケースでは,だいたい月20万円くらいになります。
また,一般に養育費とは公立中学校・高校に進学するケースを念頭に置いていますが,私立学校に通う際の学校教育費は含まれていません。たとえば親が僧侶で子供にもいずれ寺を継がせる,そのために大学の仏教学部に通わせるとか,レベルの高い教育を受けさせたいという考え方が出てくるでしょうから,つまり私立高校の学費や大学の進学費用をどちらが負担するのか,という点も考慮しておかなければなりません。
この点を決めずに先に離婚をしてしまうと,子供が大学進学をする際に,入学金や学費の分担について,紛争が蒸し返されること危険があります。
・檀家との関係など
離婚というのは,とてもナイーブでセンシティブな問題ですから,どれだけ徳の高い方であっても,自分一人で解決するのは難しい問題です。どうしても感情的になるとか,解決しなければならない問題の整理ができず,協議が泥沼化することもあります。
しかし,離婚問題が泥沼化するというのは,やはりほかの人にとって見れば好奇の目で見てしまうこともある内容で,あまり恰好のいい話ではありません。とくに僧侶の方のように,人格やプライベートについて高い高潔さが期待されている場合,家庭内部の問題というのは,できれば早期に解決してしまいたいものです。
しかし,離婚問題というのは,人格や価値観といった感情の問題であるとともに,純然たる法律問題でもあります。どうしても本人だけできれいに解決するという事には限度があります。
しかし早い段階で弁護士にご相談いただければ,解決しなければならない問題点や今後の見通しを的確に把握できますから,紛争の早期解決に結びつきます。
・弁護士に相談することのメリット
僧侶の方は当然仕事も忙しく,またその職業柄,自分自身の家庭問題の事やプライベートなことを他人に相談しづらい環境にある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,現役の僧侶であっても人間である以上,離婚問題に巻き込まれることは,なにもおかしいことではありません。ましてや離婚や財産分与,親権といった複雑な話で弁護士に相談するのは,なにもやましくありません。むしろ,できるだけ早期に,専門的な知識と見通しの下で離婚問題の対応方針を確定することで,協議や訴訟手続きも泥沼化させず,効率よく解決方法を探ることが可能になります。
ご自身の利益を最大限に守るため,また新たな生活に向けた第一歩をスムーズに歩みだすため,できるだけ早い段階でのご相談をお勧めいたします。
当事務所では,初回相談は無料です。ご予約いただければ夜間,週末のご相談もお受けできますから,お仕事の都合で平日は相談できないという方も,安心してご連絡ください。また,弁護士は守秘義務を負っていますので,あなたが相談された内容がほかの誰かに知られることはありません。
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