大学教授の離婚問題
最先端のアカデミズムの現場で日本の知を支える大学教授の先生方にも,離婚の問題に巻き込まれる方はいらっしゃることと思います。
大学教授の先生方は普通の勤め人とは生活スタイルも違いますから,離婚の際にも注意しなければならない点があります。
・大学教授の年収
教授の先生の離婚問題で考えないといけない内容として,収入が高いという点があります。
教授の先生の収入については,勤務されている大学や職務(教授,准教授,講師などの別)によっても異なるようですが,一つのデータとしては,平均して大学教授の平均年収は1100万円程度あるそうです。
となると,養育費や財産分与についても,比較的高額になる事が予想されるため,分与の対象範囲や金額を慎重に検討しなければなりません。
・財産分与とは
財産分与とは,夫婦の協力によって築き上げた財産を,離婚に際し清算するというもので,婚姻後に夫婦の協力で取得した財産がすべて含まれます。預貯金や現金はもちろんですが,不動産,証券やゴルフ会員権などもその対象となります。
・養育費,慰謝料について
離婚するにあたっては,慰謝料や養育費といったお金の問題も出てきます。これは,財産分与とは別に,離婚後の子供の養育にかかる費用を負担するというもの(養育費)や,離婚の原因がある当事者から相手方に対して与えた精神的苦痛を補わせるための金銭(慰謝料)など,目的も名目も違ってきます。
慰謝料は,イメージとして分かりやすいのは,浮気をした妻から夫に支払うとか,DVをした夫から妻に支払うなど,離婚原因のある有責配偶者が,支払いを命じられるものです。
先生方の場合,たとえば研究室の助手やゼミの学生と不倫関係になったとか,激務に耐えかねて家の中ではつい暴力的になってしまったなど,人には言えない離婚原因もおありかもしれません。この原因を争わずに離婚について考えるという事となれば,その慰謝料の額がどのくらいになるのが適正なのかを,お考えになるべきでしょう。
慰謝料の額は,その有責性の度合いや離婚に至るまでの経緯によって事件ごとに決まりますから,必ずしも「どういうケースでは何万円」と決まる計算式があるわけではないのですが,概ね,200万円から300万円程度の枠内に収まる事件が多く,500万円を超える事件は,裁判所における割合としては非常に少なくなっています。(2013年の東京家裁の統計でいえば,500万円を超える慰謝料が認容されるケースは,約5%とのことです)
ただし,支払い義務者の財産状況が非常に高額所得者である場合には,なぜか,この慰謝料や養育費の額が高額になる事があります。
特に教授の先生のご家庭では,自分の子供たちも大学院まで出させて研究者にさせようとか,良い教育を受けさせるために私立の学校に通わせたり高い教育資金をかけたりする傾向があります。
子供の養育にかかる費用の考慮要素には,親の生活レベルや家庭環境に見合った教育を受けるという側面もありますから,やはり,一般の家庭よりは高額が認定されやすいでしょう。
その場合でも,本当に支払うべき慰謝料はいくらなのか,適正額はいくらかという問題は,常に発生します。
・家事,子育てへの非協力?
よく言われるのは,忙しい夫が,家事に協力してくれない!というような話です。
先生方はどうしても研究や学会,大学での授業などで昼夜を問わず,どうしても仕事優先の生活スタイルにならざるを得ません。一つの大学の教授職に専従せず,いくつかの大学を掛け持つとか,民間の会社も掛け持つなど,教授の先生方のワークスタイルも様々です。
となると,家の事は妻に任せて自分は仕事に,という「昔ながらの」家庭感が強くなりがちな傾向にあります。
大事なお仕事が忙しいのだから,なかなか帰ってきてくれないのは仕方ない・・・と理解ある相手と結ばれればそれは問題ないのですが,やはり,一緒に過ごす時間が少ない分,離婚問題に発展するというリスクも,正比例して大きくなってしまいます。
このあたりの,仕事と家庭の折り合いのつけ方,ワークライフバランスの認識のずれによって,離婚問題が顔をのぞかせてくるのです。
ただし,法律的には,「一日何時間家にいないと離婚原因だ」というような決まりはありません。まったく家に帰ってこずに同居義務を果たさないとか,生活費も入れない(遺棄の状態)というような特殊な場合は法定の離婚原因に当たり得ますが,家庭を守るために仕事に出ていて,しかも大学教授いう特殊な事情からやむを得ないのであれば,それのみで離婚を求められるというのは道理にかないません。「帰りが遅いから」と一方的な離婚を求められても,法律上の離婚事由には当たりませんから,離婚に応じなければならないという訳ではありません。
・弁護士に相談することのメリット
教育職や研究職に就く方というのは,総じて知能レベルが高く,ある程度の問題はご自身で処理できてしまいます。そのくらいの能力があるという自負をお持ちの方も,少なくないはずです。
しかし,こと離婚問題については,やはり法律の専門家である第三者,弁護士にご相談いただくのがよろしいでしょう。
離婚というのは,極めてナイーブな問題を含みます。研究の時には冷静でいられる先生方であっても,ナーバスになってしまい冷静な状況判断力が鈍る危険も非常に高くあります。
離婚原因についての認識の違いや,相手方のメッセージについての行き違いなどで,話がこじれるというのは,多くあります。その原因は,感情の問題と離婚に関する法律的な問題との切り分けが,非常に難しいことに由来します。
長年連れ添った関係で,夫婦間の不満というのも蓄積されている状態だと,やはり相手に言いたいことは山ほど出てきます。もともとは別居期間の話だとか,財産分与の話を協議しなければならないのに,昔の出来事で「思い出し怒り」をして,もう相手方のすべてが憎い,冷静な話なんてできない,という状態で,挙句の果てにはお互いに言葉尻を捉えてあげ足取りを開始するという事も,少なくありません。特に先生方は,頭が良いだけに,普通ならスルーしてしまうような些末な内容でも頭に引っ掛かって,一言言わないと気が済まない,という事になりがちです。
このように感情をぶつけ合う状態になってしまうと,冷静な離婚協議というのは前に進みません。法律的に解決すべき問題は何か,目指すゴールに向かって処理すべきハードルは何かを,第三者である弁護士は冷静に見つけ出してアドバイスすることができます。
弁護士は守秘義務を負っていますから,先生が相談にいらした事実は,だれにも知られません。安心してご相談にいらしてください。
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